仕事を抱え込んでしまう理由|チームを管理しても、任せるのは難しい

仕事を抱え込んでしまう理由。QCDを守りながら仕事を渡す難しさを、一人に集まる業務とチームのイラストで表したアイキャッチ。 IT・プロジェクト管理

私はIT業界で20年以上働き、PM・PL・管理職として大小多くのチームをみてしてきました。現在は20人ほどのチームを管理する立場ですが、今でも仕事を他の人に任せることには難しさを感じています。

自分で対応すれば進められる仕事でも、他の人が対応できるように説明し、整理するのは別の難しさがあります。仕事を渡したいと思いながら、目の前の対応を優先して、また自分で進める。出来ている部分もあるけど、今もその状態が続いています。

抱え込むことで困るのは、忙しくなることだけではありません。品質・コスト・納期(QCD)の維持が特定の人に依存したままでは、その人が今の役割を離れられなくなります。

仕事を任せても、判断が戻ってくる

作業を分担できていても、状況が変わるたびに責任者の判断が必要になるなら、完全に仕事を渡せたとは言えません。

手順を説明してその作業に対応できることと、条件が変わったときにも対応できるようにすることには違いがあります。何を見て判断するのか、どこまで担当者が決めてよいのか。そこが共有されていなければ、作業を渡しても判断は戻ってきます。

自分が対応すればQCDを維持できるとしても、不在のときに同じように進むとは限りません。今の仕事が回っているかだけでなく、自分がいなくても回るか。この違いが、仕事を任せるうえで気になっているところです。

そのせいで休めなかったり、渡したと思っていた対応でQCDを脅かす状態が発生してしまう状態になりかねません。

役割を渡したいのは、負荷を減らすためだけではありません。今の仕事を他の人に任せ、別の仕事にリソースを使えるようにするためです。担当者の名前が変わるだけでは、その状態には近づけません。

「自分でやった方が早い」は、間違いとは限らない

QCDを守る責任がある立場では、自分で対応する方が合理的な場面もあります。任せるには、説明だけでなく、進め方の確認や成果物のレビューにも時間がかかるからです。

期限が迫っていれば、任せる準備に使える時間も限られます。育成や権限委譲のためとはいえ、目の前の品質や納期への責任がなくなるわけではありません。

私も、そうした条件を踏まえて自分で対応することがあります。「自分でやった方が早い」という判断を、すべて否定するつもりはありません。

ただ、その判断を繰り返すだけでは、次も自分が必要になります。今の仕事を終わらせるうえでは合理的でも、組織として同じ仕事に対応できるようになったかというと、そうとは限りません。

今回は自分で対応するとして、次も同じ形で引き取る必要があるのか。自分で進める判断と、他の人へ渡す準備は、分けて考える必要があります。

判断を説明できても、同じ判断をしてもらうのは難しい

自分の判断を言語化することは、特に難しいと感じています。対応内容をまとめても、他の人にとって分かりやすい説明になるとは限りません。

顧客への説明では、判断した後で、納得してもらえる論理を組み立てることがあります。私自身、そうして説明することがありますが、その説明が実際に判断したときの思考過程を完全に再現しているとは限りません。

判断した結果や理由が伝わることと、他の人が判断できるようになることは別です。説明を聞いて納得できても、少し条件が変わったときに何を見て考えればよいかまでは、分からないことがあります。

顧客への説明では判断結果と理由を伝え、判断の引継ぎでは見る情報・判断を変える条件・相談する範囲も整理する。重なる情報もある。

何の情報を見たのか。どの条件を気にしたのか。何が違えば別の判断をしたのか。

そうした材料を整理しないまま、結論と理由だけを渡しても、別の場面で使える説明にはならないかもしれません。自分では状況に応じて対応できても、その判断を他の人が使える形にするところに難しさがあります。

これは、説明を受ける側の能力だけの問題にはできません。説明する側が、何を伝えられていて、何を省いているのかも関わります。対応内容をまとめたことと、判断に必要な情報まで共有できたことは、分けて見る必要がありそうです。

仕組み化したいのに、その時間が取れない

判断を整理して伝えるには時間がかかります。一方で、日常業務のQCDも維持しなければなりません。

目の前の仕事に自分で対応するほど、他の人へ渡すための整理が後回しになる。整理が進まないので、次も自分で対応する。この循環を変えることも、今の課題です。

QCDを守るため自分で対応し、任せる準備の時間が減り、判断の整理が残って、次も自分が対応する循環。

「仕組み化する時間を確保する」と決めても、その間の仕事が消えるわけではありません。準備に時間を使うなら、目の前の仕事をどう維持するかも同時に考えることになります。

任せる必要があると分かっていても、すぐには変えられない。その理由には、判断を言葉にする難しさと、そのための時間を取る難しさの両方があります。

仕事の何を渡せていないのか

ここで整理したいのは、仕事全体ではなく、判断が戻ってくる箇所です。まだ効果を確かめた方法ではありませんが、手がかりとして次の三つに分けてみます。

  • 作業の手順が分からない。 何をどの順序で進めるかが伝わっていない。
  • 判断に使う情報が分からない。 手順は分かっても、条件が変わると対応を決められない。
  • 判断してよい範囲が分からない。 対応案はあっても、自分で決めてよいのか分からない。

これらをまとめて「説明が足りない」と捉えると、説明を増やすだけになってしまいます。判断範囲が曖昧な仕事なら、手順書を詳しくすることとは別に、担当者が決める範囲と相談する条件を検討できます。

もちろん、判断を任せる範囲を広げるなら、QCDへの影響も見なければなりません。どの状態で相談してもらうか、品質や進捗をどこで確認するかも含めて、仕事を渡すことになります。

何でも担当者だけで決められる状態を目指すわけではありません。相談が必要な仕事は残ります。それでも、毎回すべての判断が同じ人に戻る状態からは変えていきたいところです。

今の役割を渡し、次の仕事へ進むために

仕事を任せる目的は、自分が対応しなくても、チームでQCDを維持できる状態を作ることです。その状態になれば、今の役割を他の人へ渡し、別の仕事にリソースを使えるようになります。

自分で対応する方が早い場面はあっても、それだけを続けていると役割を渡せません。作業を分けるだけではなく、判断するための情報や、決めてよい範囲まで共有することが課題として残ります。

私自身も、言語化や仕組み化を十分にできているわけではありません。日々のQCDを守りながら、どう渡していくかに取り組んでいる段階です。

いつも同じ人へ戻ってくる仕事があるなら、足りないのは手順なのか、判断材料なのか、それとも判断する権限なのか。まずはそこを分けて見ることが、次の対応を考える手がかりになりそうです。

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